蝶番を内側に付ける作業は、外から金具を見せずに扉をすっきり仕上げたいときや、収納棚、箱、キャビネット、小さな木製扉を作るときに選ばれやすい方法です。
ただし、内側に付ける蝶番は、外側に平蝶番を当ててビスで留めるだけの作業とは違い、扉の厚み、側板との位置関係、開く角度、金具の逃げ、ビスの効き方まで先に考えておかないと、閉まらない、擦れる、斜めに下がる、すき間が大きいといった失敗につながります。
特に木材の接合と固定では、金具そのものよりも、墨付けの精度、下穴の深さ、掘り込みの均一さ、仮止め後の調整が仕上がりを左右します。
このページでは、蝶番を内側に付けたい人に向けて、最初にどの種類を選ぶべきかを整理し、その後で平蝶番やアングル蝶番、スライド丁番の付け方、寸法の決め方、よくある失敗の直し方まで順番に解説します。
初めて棚扉を作る人でも判断しやすいように、見た目だけでなく、必要な工具、向いている扉、注意すべき加工、調整の考え方まで含めて説明します。
蝶番を内側に付ける方法は金具選びで決まる
蝶番を内側に付けるときの最初の結論は、先に作業手順を覚えるのではなく、扉と本体の関係に合う蝶番を選ぶことです。
同じ「内側に付ける」という表現でも、扉の裏に金具を隠すスライド丁番、側板の内側で支えるアングル蝶番、箱や小扉に使う平蝶番、板を折りたたむドロップ蝶番では、墨付けの位置も必要な加工も変わります。
金具を選ぶ段階で間違えると、後から掘り込みを深くしたり、ビス穴を埋め直したりする手間が増えるため、まずは仕上げたい見た目、扉の厚み、開く方向、調整のしやすさを整理してから作業に入るのが安全です。
スライド丁番
内側付けで最も見た目がすっきりしやすいのは、キャビネットや収納棚の開き戸によく使われるスライド丁番です。
スライド丁番は扉の裏側に本体を埋め込み、本体側の側板に座金を固定して連結する構造なので、扉を閉めたときに外側から金具が見えにくく、完成度の高い家具のような印象にしやすいのが利点です。
一方で、扉側にはカップを入れるための丸い穴加工が必要になり、カップ径や掘り込み深さは製品ごとに決まるため、手持ちの蝶番を目分量で付ける作業には向きません。
スガツネ工業の基礎情報でも、スライド丁番は開き戸の内側に取り付ける部品として説明され、扉加工ではカップ径とカップ深さに合わせた穴加工が必要だと案内されています。
見た目を重視し、後から上下左右や前後の微調整をしたい収納扉なら有力な選択肢ですが、穴あけの中心位置を間違えると扉同士や側板に干渉しやすいため、説明書の寸法を必ず確認してから加工する必要があります。
アングル蝶番
アングル蝶番は、扉を本体の内側に納めたり、かぶせ気味に取り付けたりしたいときに候補になる金具です。
羽根の形に角度があり、片側を掘り込んで固定し、もう片側を突き付けるように留めるタイプが多いため、単純な平蝶番よりも内側付けの納まりを作りやすい場合があります。
DIY FACTORYの蝶番の種類に関する解説でも、アングル蝶番は扉の内側に取り付けるタイプとして紹介され、板厚に合わせたサイズ選びが重要だとされています。
向いているのは、棚や箱の扉を外からできるだけ金具が目立たないようにしたいが、スライド丁番ほど大きな穴加工はしたくないケースです。
ただし、アングル蝶番は形状と寸法が製品によってかなり違うため、見た目だけで選ぶと扉の小口や側板に干渉し、開き切らない状態になることがあります。
購入前には、扉厚、本体側の板厚、扉を閉めたときのかぶり量、軸の位置を紙に描いて確認しておくと、取り付け後のずれを減らせます。
平蝶番
平蝶番は最も扱いやすい基本の蝶番ですが、内側に付ける場合は外側に見せて付けるときよりも納まりを慎重に考える必要があります。
扉の裏面と側板の内側に羽根を固定するだけなら作業は簡単に見えますが、蝶番の軸が木材の角に対してどこに来るかで、扉の回転軌道が大きく変わります。
軸が奥に入りすぎると扉が本体に当たり、逆に外へ出すぎると閉じたときのすき間が大きくなったり、見た目が不自然になったりします。
カインズの取り付け解説でも、蝶番を当てて外形を写し、取り付け位置を決める流れが紹介されており、平蝶番では線を正確に写す作業が重要です。
小さな木箱、軽い扉、試作の棚などでは平蝶番でも十分に使えますが、重い扉や頻繁に開閉する場所では、ビスの本数や板厚が足りないと下がりやすくなります。
内側に平蝶番を使うなら、いきなり本番材に留めず、端材で開閉の逃げを試してから本加工に進むと失敗をかなり減らせます。
フラッシュ蝶番
フラッシュ蝶番は、羽根同士が重なる構造によって掘り込みを省きやすい蝶番で、薄い木製扉や小型の収納扉に使いやすい金具です。
通常の平蝶番をそのまま付けると、蝶番の厚み分だけ扉と本体の間にすき間ができますが、フラッシュ蝶番は重なりで厚みを逃がせるため、軽い工作では仕上げが手軽になります。
内側に付ける場合は、外から金具を完全に隠せるとは限らないものの、掘り込み加工に自信がない初心者にとっては扱いやすい候補です。
ただし、フラッシュ蝶番は厚い扉や重い扉を支えるための金具ではないことが多く、ビスも小さくなりがちなので、扉の重さを過信しないことが大切です。
軽量な木箱のふた、簡易的な扉、室内の小物収納には向いていますが、毎日強く開閉する家具や、子どもが引っ張る可能性のある扉では耐久性を優先して別の金具を検討しましょう。
ドロップ蝶番
ドロップ蝶番は、下方向に開く扉や、作業台の延長板、折りたたみ式の面材に使われることが多い蝶番です。
一般的な横開き扉に使うものというより、扉や板を開いたときに面をそろえたい場面で候補になり、内側に納めることで外観をすっきりさせやすい特徴があります。
取り付けには両側の掘り込みが必要になることが多く、掘り込み深さが不均一だと、開いたときに段差が出たり、閉じたときに板が浮いたりします。
そのため、初心者が初めて挑戦する蝶番としてはやや難度が高く、ノミやトリマーで均一な座掘りを作れるかどうかが仕上がりを左右します。
小さな棚扉を内側に付けたいだけならスライド丁番やアングル蝶番の方が扱いやすい場合が多く、ドロップ蝶番は用途が合うときだけ選ぶのが無理のない判断です。
種類の見分け
蝶番を内側に付けるときは、金具の名前だけでなく、扉のどの面に固定するか、どの加工が必要か、取り付け後に調整できるかを見て選ぶことが大切です。
特に収納扉では、見た目を優先する人ほどスライド丁番を選びたくなりますが、35mm前後のカップ穴を正確に掘る工具がない場合は、アングル蝶番やフラッシュ蝶番の方が現実的なこともあります。
| 種類 | 向いている扉 | 主な注意点 |
|---|---|---|
| スライド丁番 | 収納棚の開き戸 | カップ穴が必要 |
| アングル蝶番 | 内側納まりの木製扉 | 板厚に合わせる |
| 平蝶番 | 軽い小扉や箱 | 軸位置を試す |
| フラッシュ蝶番 | 軽量な簡易扉 | 耐荷重を見込む |
| ドロップ蝶番 | 下開きや折りたたみ | 掘り込み精度が必要 |
表のように、同じ内側付けでも必要な加工と得意な用途は異なるため、作りたい扉の完成形から逆算して選ぶと、ビス穴の開け直しや金具の買い直しを避けやすくなります。
扉厚の確認
内側に蝶番を付ける前には、扉の厚みを必ず確認し、金具のビス長さや掘り込み深さに無理がないかを見ておきます。
薄い合板や集成材では、長いビスを使うと表面に突き抜けたり、下穴を深くしすぎて固定力が落ちたりするため、蝶番の種類よりも板の厚みの方が制約になることがあります。
- 扉厚を測る
- ビス長を合わせる
- 下穴深さを控える
- 木口割れを避ける
- 必要なら補強材を足す
特に小さな扉では、見た目を優先して薄い板を使いがちですが、蝶番を固定する部分だけでも裏に当て木を入れると、ビスの効きが安定して開閉時のぐらつきを抑えられます。
扉厚が足りない場合は、無理に大型のスライド丁番を選ぶより、小型の金具、軽量な面材、マグネットキャッチとの併用などで負担を分散させる方が安全です。
開き方の確認
蝶番を内側に付ける付け方では、扉を右に開くのか左に開くのか、上に開くのか下に開くのかを、加工前に実際の向きで確認することが欠かせません。
作業台の上で扉だけを見ていると左右を間違えやすく、特に裏面に金具を付ける作業では、表から見た開き方向と裏から見た作業方向が逆に感じられます。
開き方を間違えると、蝶番が取り付けられても扉が本体に当たったり、手を掛けたい側とは反対に開いたりして、完成後の使い勝手が大きく下がります。
対策としては、本体を実際に使う向きに置き、扉の表面に養生テープで上、下、右、左を書き、蝶番側にも印を付けてから墨付けを始めるのが効果的です。
内側付けは外観がきれいに仕上がる反面、作業中に位置関係を見失いやすいため、加工前の確認を丁寧にするだけで失敗を大きく減らせます。
内側付けの寸法を決める準備

蝶番を内側に付ける作業では、ビスを打つ前の準備が仕上がりの大半を決めます。
扉と本体のすき間、蝶番の軸位置、上下の取り付け高さ、扉の重心を先に決めておけば、開閉時に擦れたり、閉じたときに片側だけ浮いたりする問題を避けやすくなります。
特に木材はわずかな反りや厚みの違いが出やすいため、図面上の寸法だけで進めず、現物合わせで確認する意識が重要です。
基準線
最初に決めるべきなのは、扉側と本体側のどこを基準にして蝶番の位置を合わせるかです。
基準線が曖昧なまま作業すると、上の蝶番と下の蝶番で軸の位置がわずかにずれ、扉を開け閉めするたびにねじれるような抵抗が出ます。
| 基準にする場所 | 確認する内容 | ずれたときの症状 |
|---|---|---|
| 扉の小口 | 軸の出方 | 開閉時に擦れる |
| 扉の上端 | 上下位置 | 見た目が傾く |
| 側板の内面 | かぶり量 | 閉まりが浅い |
| 本体の前面 | 面のそろい | 扉が出入りする |
基準線は鉛筆で薄く書くだけでなく、差し金やスコヤを使って直角を確認し、可能なら上下の蝶番位置を同時に写しておくと精度が上がります。
墨付け後に蝶番を当て、扉を閉めた状態と開いた状態を手で再現してみると、軸の位置が奥すぎるか外すぎるかを早めに判断できます。
すき間
内側付けの扉では、すき間を小さくしすぎると見た目はきれいに見えますが、木材の反りや塗装の厚みで後から擦れやすくなります。
逆にすき間を大きく取りすぎると、閉めたときに内部が見えたり、扉が雑に取り付けられた印象になったりするため、用途に合った余裕を持たせることが大切です。
収納棚の軽い扉であれば、上下左右のすき間を均一に見せることを優先し、開閉時に干渉する側だけ少し余裕を取ると調整しやすくなります。
塗装する予定がある場合は、塗膜の厚みで扉がきつくなることがあるため、無塗装の状態でぴったりにしすぎない方が安全です。
仮組みの段階で薄いカードやスペーサーを挟んで扉を固定し、同じすき間を保ったまま蝶番の位置を写すと、左右差の少ない仕上がりになります。
工具
蝶番を内側に付ける作業に必要な工具は、選ぶ蝶番によって変わりますが、共通して大切なのは正確に測る道具と下穴を開ける道具です。
電動ドライバーだけでいきなりビスを打つと、木材が割れたり、ビスが斜めに入って蝶番が浮いたりするため、下穴と皿取りを丁寧に行う方が結果的に早く仕上がります。
- 差し金
- スコヤ
- 鉛筆
- キリ
- 下穴用ドリル
- プラスドライバー
- ノミ
- ボアビット
平蝶番やアングル蝶番で掘り込みを作るならノミがあると便利ですが、深く削りすぎると蝶番が沈んで扉が傾くため、少しずつ削って現物を当てながら確認します。
スライド丁番を使う場合は、カップ穴に合うボアビットや座掘り工具が必要になるため、金具を買う前に工具が用意できるかも確認しておきましょう。
平蝶番やアングル蝶番の付け方
平蝶番やアングル蝶番を内側に付ける場合は、扉側に先に蝶番を仮止めし、本体側へ移す流れで進めると位置合わせがしやすくなります。
いきなり本体側に固定してしまうと、扉を持ちながら細かい高さを合わせる必要があり、ビス穴がずれて修正しにくくなります。
ここでは、軽い木製扉や収納棚の扉を想定し、墨付け、掘り込み、ビス止めの順に、内側付けで失敗しやすいポイントを整理します。
墨付け
墨付けでは、蝶番の軸が扉の小口に対してどの位置に来るかを最初に決めます。
平蝶番の場合、羽根だけを見て位置を合わせるのではなく、軸が回転の中心になることを意識しないと、扉が開く途中で本体の角に当たることがあります。
| 作業 | 見る場所 | 判断の目安 |
|---|---|---|
| 蝶番を当てる | 軸の中心 | 角に近すぎない |
| 外形を写す | 羽根の輪郭 | 線を太くしない |
| ビス位置を写す | 穴の中心 | キリで印を付ける |
| 仮開閉する | 扉の逃げ | 擦れを確認する |
鉛筆線は太いほど誤差が出るため、芯を細めにして、蝶番をしっかり押さえながら外形を写します。
上下に複数の蝶番を付けるときは、片方だけを先に本締めせず、すべて仮止めしてから扉の動きを確認すると、ねじれのある固定を避けやすくなります。
掘り込み
掘り込みは、蝶番の羽根の厚みを木材に逃がして、扉と本体の面をそろえるための加工です。
内側付けでは、掘り込みが浅いと扉が浮き、深いと扉が本体側へ寄りすぎて擦れるため、削る量を一度で決めようとしないことが大切です。
作業では、写した輪郭の内側に浅く切り込みを入れ、木目に沿って薄く削り、蝶番を当てて高さを確認する流れを繰り返します。
ノミの刃を強く入れすぎると輪郭の外まで欠けやすく、特に柔らかい針葉樹や薄い合板では表面がめくれやすいので注意が必要です。
彫り込みが少し深くなった場合は、薄い紙や突き板をスペーサーとして挟んで高さを戻すこともできますが、最初から浅めに進める方がきれいに仕上がります。
ビス止め
ビス止めでは、蝶番の穴の中心に下穴を開け、ビスをまっすぐ入れることが最も重要です。
小さな蝶番ほどビスも細く、木材の端に近い位置で固定するため、下穴なしで締め込むと木口が割れたり、ビスの頭が蝶番の皿にきれいに収まらなかったりします。
- キリで中心を決める
- 細い下穴を開ける
- 手回しで仮止めする
- 開閉を確認する
- 最後に本締めする
電動工具を使う場合でも、最後の締め込みだけは手回しドライバーで行うと、締めすぎによる木材のつぶれや蝶番の変形を防ぎやすくなります。
ビスが斜めに入ったと感じたら、そのまま力で締め込まず、一度抜いて穴を木片や爪楊枝と木工用接着剤で埋め、乾いてから正しい位置に下穴を開け直す方が確実です。
スライド丁番の付け方

スライド丁番を内側に付ける場合は、平蝶番のように羽根を表面に当てるのではなく、扉側のカップ穴と本体側の座金位置を正確に合わせる作業になります。
カップ穴の径、扉端から穴までの距離、座金の高さ、かぶせ量は製品ごとに条件があり、説明書やメーカーの寸法表を見ずに進めると干渉が起こりやすくなります。
スライド丁番は後から調整しやすい反面、最初の穴位置が大きく外れると調整範囲では吸収できないため、加工前の確認を丁寧に行いましょう。
カップ穴
スライド丁番の扉側には、金具本体の丸いカップを入れるための座掘り穴を開けます。
一般的な家具用では35mm前後のカップ径がよく見られますが、すべての製品が同じ寸法ではないため、必ず使用する蝶番の仕様を確認してからボアビットを選びます。
| 確認項目 | 意味 | 間違えた場合 |
|---|---|---|
| カップ径 | 穴の直径 | 金具が入らない |
| カップ深さ | 掘る深さ | 表に抜ける |
| 扉端距離 | 端から穴まで | 干渉する |
| 扉厚 | 板の厚み | 固定力が不足する |
スガツネ工業のスライド丁番基礎知識でも、カップ径と掘り込み深さは製品ページの加工寸法を参照する考え方が示されています。
穴を開けるときは、貫通を防ぐためにドリルに深さの目印を付け、端材で試し掘りをしてから本番の扉に加工すると安心です。
座金
座金は本体側の側板に固定する部品で、スライド丁番の位置と扉の出入りを決める重要な役割を持ちます。
扉側のカップ穴が正しくても、座金の高さや前後位置がずれると、扉が本体より出たり、閉じたときに斜めに見えたりします。
座金の位置を決めるときは、まず扉を閉めたときにどれだけ側板へかぶせたいかを決め、説明書に従って側板の前端からの距離を写します。
仮止めの段階ではビスを強く締め切らず、扉を取り付けて上下左右のすき間を見てから本締めする方が、後の修正が少なくなります。
同じ棚に複数の扉を並べる場合は、一枚ずつ感覚で付けるのではなく、座金用の簡単な治具を作って同じ位置を繰り返し写すと、見た目のそろいが良くなります。
調整ネジ
スライド丁番の強みは、取り付け後に扉の位置を微調整できる点です。
製品によって構造は異なりますが、一般的には左右、前後、上下の方向に調整できるものが多く、扉のすき間や面の出入りを整えやすくなっています。
- 左右のすき間
- 扉の出入り
- 上下の高さ
- 閉まり具合
- 隣の扉とのそろい
調整は一つのネジだけで一気に直そうとせず、上下の蝶番を少しずつ動かしながら、扉全体の傾きを見て進めます。
大きくずれている場合は調整ネジで無理に合わせるより、座金の位置やカップ穴の位置が適切だったかを確認し、必要ならビス穴を埋めて付け直した方が長持ちします。
内側付けで起きやすい失敗
蝶番を内側に付ける作業で多い失敗は、金具そのものの不良ではなく、位置決め、下穴、締め付け、扉の重さへの見込み不足から起こります。
最初は問題なく見えても、数日使ううちに扉が下がったり、閉じるたびに擦れる音が出たりすることがあるため、原因を分けて考えることが大切です。
ここでは、DIYで起こりやすい症状を、原因と直し方に分けて整理します。
擦れる扉
扉が本体に擦れる場合は、すき間不足、軸位置のずれ、掘り込み深さの差、扉の反りが主な原因です。
特に内側付けでは、蝶番の軸が少し奥へ入りすぎただけで、扉の角が側板に当たりやすくなります。
| 症状 | 考えられる原因 | 直し方 |
|---|---|---|
| 開き始めに当たる | 軸が奥すぎる | 蝶番を外へ寄せる |
| 閉めると擦る | すき間不足 | 扉端を調整する |
| 上だけ当たる | 上下位置のずれ | 座金やビスを直す |
| 途中で重い | 軸がそろっていない | 上下の芯を合わせる |
削って直す前に、まずビスを少し緩めて扉の動きが軽くなるかを確認すると、原因が位置なのか木材の干渉なのかを見分けやすくなります。
削る場合は一気に大きく削らず、当たっている部分だけを鉛筆で印付けし、少し削っては開閉を確認する手順にすると、すき間が広がりすぎる失敗を防げます。
下がる扉
扉が使っているうちに下がる場合は、蝶番の数が足りない、ビスが短い、下穴が大きい、木材が柔らかいといった固定力の不足が疑われます。
特に幅の広い扉は、見た目以上に蝶番へねじる力が掛かるため、小さな蝶番を二つだけで支えると、上側のビス穴が広がって扉が下がりやすくなります。
軽い扉であればビス穴を埋め直して締め直すだけで改善することもありますが、重い扉では蝶番を大きくするか、三つ以上に増やす方が安定します。
木口や合板の端にビスを効かせている場合は、ビスが繊維を押し広げて抜けやすくなるため、取り付け位置に補強材を足す方法も有効です。
下がった状態で無理に開閉を続けると、蝶番だけでなく扉の角や本体側の木材も傷むため、早めに原因を見て直しましょう。
ビス穴の傷み
ビス穴が傷んで空回りする場合は、そのまま太いビスに替えるだけでは根本的な解決にならないことがあります。
穴が広がった状態で強く締めると、木材がさらに崩れて固定力が落ちるため、一度穴を埋めてから正しい位置に下穴を開け直すのが基本です。
- ビスを抜く
- 穴の粉を取る
- 木片を接着する
- 乾燥を待つ
- 下穴を開け直す
- 手回しで締める
爪楊枝や細い木片を木工用接着剤と一緒に入れて埋める方法は小さな蝶番では使いやすいですが、重い扉では補修部分だけに頼らず、取り付け位置や蝶番の数も見直します。
ビス穴の傷みは、締めすぎ、下穴不足、扉の重さ、開閉時の衝撃が重なって起こるため、補修後はゆっくり閉まるキャッチや戸当たりを使って負担を減らすと長持ちします。
きれいに仕上げる調整と補強
蝶番を内側に付けた後は、ビスを締めて終わりではなく、扉のすき間、面のそろい、開閉の軽さ、閉まり切る位置を順番に確認します。
木材は加工直後だけでなく、湿度や塗装、使い方によってわずかに動くため、完成直後に少し余裕を持った調整をしておくと後の不具合が少なくなります。
この章では、仕上がりを安定させる調整と、長く使うための補強の考え方をまとめます。
仮止め
仮止めは、内側付けの蝶番で必ず行いたい確認作業です。
すべてのビスを最初から本締めすると、扉がわずかにずれていても木材に強く固定され、修正するときにビス穴が広がりやすくなります。
| 段階 | 締め方 | 確認すること |
|---|---|---|
| 一回目 | 軽く止める | 扉が落ちないか |
| 二回目 | 少し締める | すき間が均一か |
| 三回目 | 開閉する | 擦れがないか |
| 最後 | 本締めする | 頭が浮かないか |
仮止め中は扉を何度も開け閉めし、重くなる位置や擦れる位置がないかを確認します。
問題があるときは、ビスを少し緩めて蝶番の位置を微調整し、それでも直らない場合は木材の干渉や掘り込み深さを見直しましょう。
戸当たり
内側付けの扉は、閉じたときにどこで止まるかを決めておかないと、蝶番だけで閉まり位置を受ける状態になりやすくなります。
戸当たりやマグネットキャッチを使うと、扉の止まる位置が安定し、蝶番にかかる負担も減らせます。
- 戸当たりを付ける
- マグネットを使う
- ゴムクッションを貼る
- 閉まり位置をそろえる
- 強い衝撃を避ける
特にスライド丁番以外の金具では、閉じた後の位置を金具だけで細かく調整しにくいため、戸当たりを併用すると仕上がりが安定します。
扉が勢いよく閉まる場所では、薄いゴムやフェルトを当たる面に貼るだけでも音と衝撃が減り、ビス穴の傷みを抑えやすくなります。
塗装後の確認
木製扉に塗装やオイル仕上げをする場合は、塗装前と塗装後で開閉具合が変わることがあります。
塗膜が重なるとすき間が狭くなり、特に扉の小口や本体側の内面に塗料が厚く付くと、完成前は問題なかった部分が擦れることがあります。
蝶番を付けたまま塗装すると金具に塗料が入り、動きが悪くなったり、ビス頭が外しにくくなったりするため、可能であれば金具を外して塗装する方がきれいです。
再取り付け時に同じ位置へ戻せるよう、蝶番ごとに上側、下側、扉側、本体側の印を付けておくと、組み戻し後のずれを防げます。
塗装後は完全に乾いてから扉を取り付け、擦れる部分があれば無理に押し込まず、軽く研磨してから再調整しましょう。
蝶番の内側付けは先に納まりを決めると失敗しにくい
蝶番を内側に付ける作業では、最初に金具を選び、次に扉の厚み、かぶせ方、すき間、開き方向を確認し、その後で墨付けと下穴に進む流れが大切です。
見た目をすっきりさせたい収納扉にはスライド丁番が向きますが、カップ穴の加工精度が必要になり、簡単な小扉や箱では平蝶番、アングル蝶番、フラッシュ蝶番の方が扱いやすい場合もあります。
平蝶番やアングル蝶番では軸位置と掘り込み深さ、スライド丁番ではカップ穴と座金位置が仕上がりの中心になるため、説明書と現物を見ながら仮止めで確認することが欠かせません。
扉が擦れる、下がる、閉まらないといった失敗は、ビスを強く締めるだけでは直らないことが多く、軸の位置、すき間、ビス穴、木材の補強を分けて見直すと原因を見つけやすくなります。
木材の接合と固定では、金具を付ける作業そのものよりも、正確な基準線、適切な下穴、少しずつ進める掘り込み、最後の調整が完成度を高めるため、内側付けほど焦らず段階を分けて進めましょう。



コメント